「肝胆膵専門施設」って何ができるの?
消化器の中でも肝臓は特に大切な臓器で、これがないと人は生きて行けないことは皆さんよくご存知のことと思います。
ですから大きな障害を受けて生命に重大な問題を及ぼす肝臓に対して、「肝臓移植」という治療法が新聞やテレビでよく報じられる訳であります。
この肝臓が正しく働くには、胆のうや胆管、また膵臓が重要となります。
但し、小児に関するこのような病気は小児専門の病院がありますから、そちらの施設で治療をお受けください。
お酒(アルコール)の飲みすぎで肝臓を悪くしたとよく言われますよね。
肝臓悪化の理由として、長年(10年以上)の間に、たくさんのお酒を毎日飲み続けないとそれほど悪くはなりません。
しかし、もともと「B型」や「C型肝炎ウィルス」などによる慢性の感染で肝臓を病んでいる人ではアルコールを飲むこと自体、身体によくありません。
食生活など他の因子も関係しますが、アルコールを飲みすぎると「脂肪肝」にもなる恐れもあります。また様々な病気のために飲んでいる薬や健康食品、さらに周囲の環境物質など思いもしない薬物による肝臓障害の場合もあります。
このように様々な原因に関係する急性肝炎などの急性の肝障害や、慢性肝炎や肝硬変などが当院での治療の対象になります。
B型やC型慢性肝炎が将来「肝硬変」に進まないようにするための対策として『インターフェロン療法』などがあることは新聞などにもよく取り上げられご存知かと思います。
慢性肝炎を長く患うとしばしば肝硬変に移行します。
さらに長年を経ることにより、肝胆癌(原発性)が高率に発生します。
慢性肝炎・肝硬変の患者さんは定期的に血液検査や超音波診断、CTスキャンを受けることが重要で、できるだけ早期に発見して、適切な治療を受けることが大切になります。
私たちは長年に渡って、手術(肝切除)、TAE(肝動脈塞栓術)、エタノール注入療法、ラジオ波・マイクロ波凝固療法、経肝動脈(抗癌剤)注入療法など現在肝癌治療として行われている治療法のすべてを高度な技術で行って参りました。
病状や全身状態に合わせて、さらに患者さんの希望もお聞きしながら治療方針を決定し、治療を行います。これらの治療実績に関しては、30年以上に渡り前施設などで報告し、高く評価されております。
肝硬変が進行すると肝臓が硬くなることによって、肝臓に入ってくる門脈という血管がミクロのレベルで細くなり、その結果門脈血が肝臓内に入りにくくなります。
そのため門脈の血液は鬱滞し、心臓に戻るために胃のほうへ逆流して胃の周囲から食道の周囲に網の目のような迂回路を作ります。これは胃や食道の粘膜下で静脈瘤(食道胃静脈瘤)を形成し、これが破れると大出血(吐血、下血)につながります。
この静脈瘤に対する治療法は、ほとんどが内視鏡的な治療法(内視鏡的静脈瘤結さつ術・硬化療法)で行われますが、状況によっては手術を必要とする場合もあります。
ウィルス肝炎関連以外の肝臓病には、自己免疫性肝炎という難しい名前の病気や、各種の代謝異常からくるまれな病気もあります。
肝臓で作られた胆汁が流れる胆内胆管という管があり、ここに発生する肝内胆管癌という腫瘍があります。
この場合は原則的に手術を要します。
また腹腔内の血液の関係で、胃癌・大腸癌や膵癌・胆のう癌などが肝臓に転移することがしばしばあり転移性肝癌と呼ばれています。これに対しても手術的に切除するか、何らかのルートを用いた抗癌剤による治療が勧められます。
他に肝臓の病気には肝膿瘍のようにできるだけ早く治療する必要があるものから、血管腫や肝のう胞などたまに経過を見ているだけでよい良性の腫瘍もあります。
大変まれですが、肝内結石などという肝臓内の胆管にできる結石もあり、これは多くの場合治療の対象となります。
この施設ではこれらの病気に関して肝臓の機能検査や、超音波検査、CTスキャンさらには血管撮影、肝組織生検などの形態を見る様々な検査を行って、的確な診断のもとに、適切な治療を提案し、行います。
A型 ・ B型 ・ C型
病気の治療の目的で使用する内服薬、注射などが原因で肝細胞障害が生じた場合を言います。個体の特異体質により生じる薬物アレルギー性肝障害と、薬物又はその代謝物の肝毒性による中毒性肝障害があります。薬物アレルギー性肝障害の方が多く、肝障害の前に発熱、発疹などのアレルギー反応が現れます。肝障害は、薬剤を使用開始してから大体6週間以内に現れます。多くの場合薬剤の中止によって回復しますが、中には肝細胞障害や胆汁鬱滞が著しく、回復に時間を要する場合や予後不良なものもあります。
肝臓で作られた胆汁が胆内胆管から肝臓の外にでて左右の肝外胆管になり、その後これが合流して総肝管、総胆管になります。
途中の胆汁の休憩の袋が胆のうです。
食べ物が十二指腸を通過すると胆のうが収縮して胆汁が十二指腸に排出し、同時に膵臓から排出された膵液(消化酵素)が胆汁により活性化されて、食べたものは化学的に消化されます。
この胆汁の流れる管に発生する病気のほとんどは外科的な治療の対象になります。
良性の病気である胆のう結石(通常胆石症とよばれています。)
胆管結石やこれらの管に発生した癌-胆のう癌、胆管癌-が主な病気です。
胆石症だけならば超音波検査だけで容易に診断がつき治療方針も決まりますし、最近では胆石症のほとんどの症例は、腹腔膜下胆のう摘除術(ラパコレと呼ばれています)という内視鏡的手術が主流で、当院でも積極的に行います。
しかし、血液検査で肝機能異常を示したり黄疸を伴う場合には、どこかにその原因があるはずですから様々な方面からこれを探り、時には肝臓の中にチューブを入れたりする検査や処置をした後に適正な診断にいたり、治療に入るということも必要となります。まれに先天的な異常や良性の腫瘍もあります。
膵臓の病気には、急性膵炎、慢性膵炎や糖尿病のように膵臓全体に関わる基本的には内科的な病気と、膵臓癌のように外科的な治療を基本とする腫瘍があります。
アルコールや胆管結石、高脂血症などに起因する急性膵炎は多くは適切な治療によって治りますが、一部は重症型膵炎となって、長期間にわたって腹痛に悩まされることもしばしばあります。
こちらの病気は生活習慣病と密接な関係を持ちますので、食事やアルコール摂取など日頃の自己管理に注意していただきたいものです。
糖尿病は成人の中でもっとも注意する病気の一つです。
糖尿病が悪化すると、目、腎臓、心臓・血管などの致命的な障害につながりかねません。
是非とも専門医の指示に従って食事療法、内服療法、インシュリン療法など十分な管理を行ってください。膵臓には良性の腫瘍から悪性腫瘍すなわち膵臓癌、さらにどちらとも言い難い状態の腫瘍があります。
明らかな良性腫瘍は放置すればよいのですが、膵癌は直ちに手術などの治療を要します。粘液産生性のう胞腫瘍というのがあって診断・治療方式にはまだ議論があるものもありますが、十分な観察が必要です。
このように肝胆膵の領域の病気は内科的には栄養、アルコール摂取など食事療法と同時に適切な指導・管理が大切です。
またこの領域には各臓器を栄養する大切な動脈と、おなかの中のすべての臓器から栄養やホルモンなどを運んでくる門脈と、さらに肝臓から排出される胆汁の流れる道の胆管という重要な管がすべて集まっています。
癌などの外科的治療を行う際には、これらとの関係を含めた詳細な診断を必要としますし、各臓器の機能や形態を十分に考慮した上で手術を行わなければなりません。
以上のことから他の臓器以上に専門的知識や技術、経験が重要となる領域であり、高い専門性が求められる分野であることがよくお分かりいただけると存じます。